頭痛外来
頭痛にはいろいろな原因があります。大切なのは、頭痛の原因が生命に危険性があるかどうかということです。たとえば脳腫瘍や脳出血などが原因で頭痛をきたすこともあります。また頭痛の種類によって薬の種類が異なってきます。市販の頭痛薬を飲み続ける前に、まずは頭痛専門医による正しい診断を受けて頂くことが大切です。
頭痛で困っている方を支えていくのが我々のクリニックの使命であると考えています。
頭痛外来では、頭痛に関して詳しく問診を行い、必要な場合はMRIを実施し、その頭痛が一時性頭痛なのか二次性頭痛なのかを判断します。
検査
MRI検査:約10分から15分程度の検査です。生命に危険のある頭痛かどうかを評価します。
頭痛の種類
頭痛には一次性頭痛と脳腫瘍や脳出血が原因となって起こる二次性頭痛の2つに大きく分類されます。
一次性頭痛
一次性頭痛とは、明らかな原因のない慢性的に継続する頭痛のことです。頭痛で外来を受診する人のほとんどがこちらで、それだけで命にかかわることはありませんが、日常生活に支障をきたす場合は治療が必要です。代表的なものに、以下の3つがあります。
緊張型頭痛
毎日のように続く痛みで、頭を締め付けられるような頭痛です。多くは肩や首が張った感じになり、これが原因で頭痛を起こします。原因としては長時間のデスクワークや姿勢不良に伴う首や肩のこりに伴って起こります。また精神的なストレスも原因となります。頭痛の原因として末梢性要素と中枢性要素があります。1ヶ月に半分以上の頭痛が続く場合は慢性の緊張型頭痛が疑われ通常の痛み止めでは効果がありませんので病院で相談しましょう。
片頭痛
20代から30代の女性に多い頭痛です。頻度は多い人は週に2~3回起こり、年に1~2回の人もいます。頭の片方に脈打つ痛みが起こり、吐き気や嘔吐があります。音や光に過敏になることが多く、痛みの前兆としてチカチカと光るものが見えることもあります。
原因としては、三叉神経と硬膜などの血管が関与していると考えられていますがまだ明らかではありません。7割は遺伝性といわれています。
治療としてトリプタンという薬が有効な場合があります。市販されておりませんので、病院での処方が必要です。頻回に頭痛が見られる場合は鎮痛剤と共に予防薬が必要になります。鎮痛薬をたくさん飲んでいる方は薬物乱用性頭痛という状態になっている可能性があり、薬が頭痛を悪化させています。この場合はまず予防薬を使って、痛み止めの薬をのむ量を減らしていく必要があります。頭痛が続く方はまずは病院で相談してみましょう。
群発頭痛
男性に多い頭痛で1年から数年に数回起こる激しい頭痛です。頭痛の特徴として、頭の片側、眼の奥に「眼をえぐられるような」痛みが起こり、頭痛と同じ側に眼の充血や鼻水、涙がでることがあります。30分から数時間で痛みがおさまることが多いようです。
原因はまだ明らかにされていないですが、脳の視床下部といわれる部分が何らかの関与をしているようです。アルコールや喫煙により頭痛が誘発されることがあるので注意が必要です。
治療としてはトリプタンという薬や自分で行う注射療法などがありますので、病院で相談してください。
二次性頭痛
二次性頭痛は、脳内外に異常がみられて起こる頭痛です。
主な原因として以下のものがあります。
クモ膜下出血
脳の血管に脳動脈瘤ができて、それが破裂することによって起こる頭痛です。出血の量によって意識がなくなる場合もありますし、軽い頭痛で終わる場合もあります。2回目の出血をきたすと命にかかわることがありますので注意が必要です。
脳腫瘍
朝起きた時に頭痛がある場合は脳腫瘍が原因となっている場合があります。腫瘍ができる場所によって麻痺を起したり、言語障害が出たりします。
脳出血
手足のしびれや力が入りにくいなどの症状がある場合は脳出血を起こしている可能性があります。普段高血圧がある場合は注意が必要です。
髄膜炎
ウイルスや菌が脳内で増えることによって起こる頭痛です。高熱がでる場合が多いです。悪化するとけいれんや意識障害をきたす場合もあります。
慢性硬膜下血腫
頭を打ってから数日してから頭の中に出血をきたしてくることがあります。通常は1~2カ月してから症状がでてきます、高齢者に比較的多い病気ですが、手術をすることにより症状が軽快します。
頭痛はよくある症状の一つですが、生命に危険をおよぼすこともありますので、一度病院で相談してください。
よくある質問
Q.頭痛があるときは吐き気がひどいのですが?
片頭痛の前兆がある段階でまだ頭痛がないときに早めに吐き気止めの薬をのむことで、吐き気を予防することができます。また頭痛自体を抑えられてしまうこともあるようです。片頭痛のメカニズムにドーパミンが関与しているからではないかと考えられています。
吐き気や嘔吐がある頭痛は、片頭痛の可能性が高いので市販薬ではなく病院で相談しましょう。
Q.片頭痛が来た時の対処法
暗くて静かな部屋でじっとしておくとか、痛い部位を冷やすなどの方法が有効な場合があります。また軽い頭痛の場合はコーヒーなどカフェインの入った飲み物が有効なことがありますので試してみてください。
Q.片頭痛の予防薬はありますか?
頭痛が起こったときはトリプタンを飲むことが大切ですが予防効果はありません。月に数回頭痛が来る方は予防薬を飲んでいただき、その上で頭痛が来た場合は鎮痛薬を飲んでもらっています。
Q.子供にも片頭痛はありますか?
あります。ただしトリプタンなどの薬をまだ使うことができませんので、日常生活での注意点などの指導と通常の痛み止めを飲んでいただく場合があります。
子供の片頭痛の特徴は大人と比較して時間が短いことです。ぱっとはじまって1-2時間で終わってしまいます。そのため仮病と間違えられます。また頭の両側が痛むことが多いのも特徴です。
もやもや病やキアリ奇形などの脳神経疾患が隠れている場合もありますので症状が継続する場合は一度脳の検査をすることをお勧めします。
Q.頭痛薬を飲みすぎると良くないといわれたが?
薬物乱用性頭痛というタイプの頭痛が注目されています。慢性の頭痛があるため、薬をたくさん飲むことで頭痛が悪化してしまう頭痛です。通常は1カ月に15錠以上薬を飲んでいる方は注意が必要です。
Q.首の痛みと頭痛は関係しますか?
首の周囲の筋緊張が高くなることによって頭痛をきたすことがあります。多くの頭痛はこの緊張型頭痛に分類されます。筋肉痛による関連痛に伴う頭痛や、後頭神経が刺激されて頭痛をきたす場合などがあります。
Q.緊張型頭痛のメカニズムは?
緊張型頭痛の発症メカニズムはまだわかっていないことが多いですが、末梢性のメカニズムと中枢性のメカニズムが関与していると言われています。末梢性とは頭と首の筋肉の緊張に伴うものですので、筋緊張をとることが治療になります。また慢性化した頭痛の場合は、中枢性のメカニズムが関与しており、脳からの筋収縮を抑制する経路の働きが悪いと考えられています。
治療としては肩こり頭痛体操、、飲み薬による治療が必要です。
Q.片頭痛のある人は将来脳梗塞になりやすくなりますか?
前兆のないタイプの片頭痛のある方は、頭痛のない方と比較して約7倍脳梗塞になりやすいと言われています。また目の前がちかちかしてから頭痛が起こる前兆のあるタイプの片頭痛のある方は、約25倍脳梗塞になりやすいと報告されています。片頭痛では血管の周囲に炎症が起こります。そのため血管がもろくなりやすくなるのではと考えられています。若いうちからの片頭痛のコントロールは大切です。
Q.咳をすると頭痛がする。
咳によって引き起こされる頭痛を一次性咳嗽性頭痛といいます。まれな頭痛のタイプです。多くはアーノルド・キアリ奇形を伴っているといわれています。キアリ奇形は小脳片桃という部分が下の落ち込んでしまう脳の奇形病変です。咳などに伴って頭蓋内圧が上昇して頭痛が起こるといわれています。キアリ奇形以外にも脳腫瘍や硬膜下出血、副鼻腔炎などでも咳にともなって頭痛が起こることもあります。
Q. 走った後や重いものをもった後に頭痛がする。
このような頭痛のことを労作性頭痛といいます。
一般に予後のよい頭痛で、自然に軽快する場合もあります。原因は血管の拡張などが言われていますがまだ明らかではありません。走る前にインドメタシンなどの薬をあらかじめ飲むことが勧められます。
Q.頭痛で夜中に眼が覚めます。
睡眠中にのみ頭痛が起こって眼を覚ますような場合があります。これを睡眠時頭痛といってその他の一次性頭痛に分類されています。頭痛発作が始まると、起き上がって飲食をするなどの特徴的な行動をすることがあります。脳腫瘍や脳梗塞などでも同様な症状をきたすことがあり注意が必要です。治療は頭痛があるときにカフェインをとると有効な場合があります。
片頭痛もちの人で頭痛が夜間に起こり頭痛で目がさめる場合があります。朝起きたときに頭痛がすでにしているという場合もあります。これは片頭痛発作が夜間に起きているためです。
群発頭痛のある人で夜間に決まった時間に片側の目の奥の激しい痛みで目が覚める場合があります。この場合決まって1-2時間で治まり、1-2か月毎日のように痛みが持続します。
その他に頻度は少ないですが脳腫瘍やくも膜下出血などの危険な頭痛が隠れている場合もあります。
頭痛の原因によって治療法がそれぞれ異なりますので病院で相談しましょう。
Q.片頭痛の症状にどのようなものがありますか?
片側のこめかみの脈打つ痛み、頭痛時のはきけや嘔吐、動くと痛みが悪化する、光や音、においに過敏になる。頭痛がないときは、平常通りというところが緊張型頭痛と異なる所です。
痛み止めですぐ治る場合はそれでよいですが、日常生活に支障をきたす場合は片頭痛の薬が必要ですので病院で相談しましょう。
Q.後頭部に短時間の突き刺すような痛みが繰り返す?
後頭部の皮膚の下には大後頭神経、小後頭神経といった太い感覚神経が通っています。これらの神経が皮下に出て来るところを圧迫すると圧痛が認められますが、出ない場合もあります。この痛みは眼の周囲まで広がることがあり、このような場合は大後頭三叉神経症候群と言われます。
治療としてまずは痛み止めの薬を使いますが、神経ブロック注射が有効な場合があります。
Q.性行為に伴う頭痛
性行為に伴う頭痛には、オルガスム前頭痛とオルガスム時頭痛があります。原因として脳血管のれん縮が起こり痛みが起こるのではないかと考えられています。
インドメタシンの内服が有効といわれていますが、多くは自然に良くなっていくようです。
Q.生理の時によく頭痛が起こります。
生理の前に起こる頭痛は、月経時片頭痛の可能性が高いと思われます。月経時の頭痛を「生理痛の一種」と思っている方が多いようですが、実際は片頭痛と思われます。通常の痛み止めではコントロールが難しい場合が多く難治性です。女性の片頭痛患者さんの約半数は月経に関連して頭痛が起こると言われています。
日常生活に支障をきたしている場合は、市販の薬に頼らずに病院で相談しましょう。
Q.子供の頭痛
子供の頭痛もよく見られる症状の一つです。多い頭痛としては大人と同様に緊張型頭痛、片頭痛などがあります。日常生活に困る場合は薬を飲む必要があります。
また数は少ないですが、脳腫瘍、もやもや病、水頭症、キアリ奇形などの可能性がありますので、症状が継続する場合は病院で診察してもらいましょう。
Q.交通事故のあと頭痛が続いています。
交通事故のあと頭痛が続く場合は、脳脊髄液減少症の可能性もあります。
脳脊髄周辺に満たされている髄液が外に漏れることによってさまざまな症状をきたします。
特徴的な症状として、横になっていると頭痛はおさまるが座ったり立ったりすると頭痛が起こるというものです。頭部MRIにても、脳が下方に落ち込んでいるような所見が見られる場合もあります。症状は継続する場合は脳のMRI検査をしてみましょう。
Q.片頭痛を起こす原因はありますか?
片頭痛を誘発する因子は片頭痛をもっている方の半分以上に認められます。
例えば、アルコールを飲むと片頭痛が起こる方がいます。その他に、睡眠不足や逆に寝過ぎ、天気の変化、月経などが頭痛の引き金になります。
頭痛ノートをとることで、誘発因子を探すことが大切です。また避けることができるものが見つかれば、頭痛も楽になると思われます。